ALS治療研究開発部門は2021年に開設されました。
当部門は神経難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態メカニズムの解明と治療法開発を目指します。
ALSは、運動神経が進行性に変性し失われていくことで、脳から筋肉への指令が伝わらなくなる難病で、原因や発症のメカニズムは未解明で、根治療法はまだ存在しません。症状の始まりは手足の筋力低下やしゃべりにくさなど様々で、その後他の身体部位に伸展、進行します。病気の進行様式は個別の患者さんによって異なり、急速に進行する場合も比較的ゆっくりな場合もあります。
ALSの大部分(90~95%)は原因がはっきりせず、孤発性と呼ばれています。5~10%は、特定の遺伝子変異が原因になっていると考えられています。確認されている遺伝性・家族性のALSにおいて、日本と欧米では異なる遺伝子が関与していることが報告されています。患者数は増加してきており、全国に1万人以上の患者さんがいます。50~70歳代で発症が多く、特に65歳以上の人口増加に伴ってALS患者数が増えていると考えられます。
当部門はJaCALS(日本人ALSレジストリ研究)と呼ばれる多くの患者さん、医療機関にご協力、ご参加いただいている多施設共同研究の事務局をしています。JaCALSは2000名以上の患者を登録し、DNAと不死化リンパ球の保存、経時的な臨床情報の収集を行っています。
当部門では、JaCALSによって集められた臨床情報とDNAの遺伝子解析情報を統合解析し、発症や病態進行と関連している遺伝子を探索して、複数の遺伝子を同定しています。また不死化リンパ球由来のiPS細胞を用いて見出したALS関連遺伝子を標的とした治療法開発や病態メカニズムの解明に取り組んでいます。
私どもはこれまでに蓄えた情報と新たなテクノロジーを用いてALSの克服を目指します。
愛知医科大学
ALS治療研究開発部門
部門長 祖父江 元