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研究内容Research

私たちは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の多施設共同患レジストリであるJaCALSの運営とALS患者の縦断的な臨床情報収集、ゲノム情報解析、iPS細胞研究を主軸とした研究分子病態の解明と治療法の開発を目指しています。

ALSとは

筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis : ALS)は上位および下位運動ニューロンが進行性に変性、脱落することを特徴とする神経変性疾患であり、全身の筋萎縮、筋力低下をきたし、球麻痺、呼吸筋痲痺を生じて約3~5年で死亡もしくは永続的な人工呼吸器導入が必要となる神経難病です。日本ではALS全体の約10%は家族内で発症することが分かっており、家族性ALSと呼ばれます。一方で約90%は遺伝歴が無く孤発性ALSと呼ばれます。孤発性ALSの分子病態は未だ不明な点が多く、根本的治療法が確立されていません。

JaCALSとは

JaCALS(Japanese Consortium for Amyotrophic Lateral Sclerosis research)は、ALSの原因や症状の進行、長期的な症状の経過(予後)に関する未解明の問題を明らかにし、将来の治療開発へつなげるための施設共同の研究組織です。現在までに全国43施設が参加しており、愛知医科大学の当部門に事務局が設けられています。2026年2月から患者登録が開始され、2023年までに2300例を超えるALS患者が登録され、前向き臨床情報の収集とゲノム遺伝子および不死化細胞の保存が行われています。

ALS大規模レジストリJaCALS

JaCALSのゲノム解析

収集したDNAは様々な遺伝子解析をしています。
(SNPアレイ1900例、全エクソーム解析1300例、全ゲノム解析1200例)
これらの解析結果と臨床情報とでゲノムワイド関連解析(GWAS)を行いALSに関わる遺伝子を探索しています。

ALSの進行速度の違いに関係する遺伝子がないかGWASで調べていくと、TTNという筋肉タンパク質に関係する遺伝子の働きが悪い人は、症状が急速進行型になりやすいということもわかってきました。この原因となる遺伝子の働きをよくすることで、進行を遅らせることができるのではないかと注目しています。
Watanabe H et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2016.

孤発生ALSの進行に関連する遺伝子多型の同定

JaCALSの孤発性ALS患者1173例と東北メディカルメガバンクのコントロール8925例のSNPsを用いたGWAS、さらにヨーロッパのデータを用いたメタ解析でACSL5を新規ALS関連遺伝子として同定しました。
Nakamura R. Misawa K, Tohnai G. et al. Communications Biology. 2020.

ALSの発症に関連する遺伝子多型

1076例の孤発性ALS患者生存期間と関連する遺伝子多型をGWASで探索FGF1とTHSD7Aの進行に関わる2つの遺伝子を同定しました。
さらに患者IPS細胞由来の運動ニューロンでも患者の生存期間を再現しました。
Nakamura R. Tohnai G. et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2023.

孤発生ALS患者の生存期間と関連する遺伝子多型を同定

全エクソーム解析の結果から日本の孤発性ALS患者におけるTBK1遺伝子の新規の遺伝変異やKIF5A遺伝子の変異、DNAJC7遺伝子の変異を同定しました。
Tohnai G., et al Neurobiol Aging. 2018. Nakamura R., et al. Neurobiol Aging. 2021 Tohnai G., et al. Neurobiol Aging. 2022